簡単に言うと、気温、湿度が高い環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもってしまった状態のことです
体温が上がる運動時はより危険が高まります。重症化した場合は命に関わり、軽症でもプレーが続行できず、途中交代を余儀なくされるケースがあります
運動中の熱中症を予防するには「深部(しんぶ)体温」を下げることがカギとなります。
「深部体温」とは脳や臓器など体の内部の温度のことです。内臓の働きを守るため、一定に保たれており、健康な状態で皮膚温よりも0.5~1度ほど高いとされます
熱中症は、高温多湿な環境や運動などによりこの深部体温が上昇し、その熱をうまく外に逃がすことができずに生じます。
意識がもうろうとしたり、頭痛・吐き気・倦怠感がでたりするときは、深部体温の上昇により脳や内臓に影響が出ている可能性があります
運動中の熱中症を予防し重症化させないために、この深部体温を下げることを心がけましょう
暑熱順化
暑くなりはじめたら
まずは「暑熱順化」を
体が暑さに慣れていない時期は熱中症のリスクが高まります。
個々の体調により注意して、一時的に練習量を減らすなど、いっそうの注意を払いながら、体を暑さに慣らしていきましょう。またこの時期からアイススラリーの摂取にも慣れていきましょう

こまめな冷たい水分補給
こまめな水分補給が
やっぱり基本
こまめに冷たい水分の補給を意識し、のどがかわく前からスポーツ飲料などを飲みましょう

体の内部を冷やそう
外部冷却は練習後に
練習中や試合中は深部体温を下げることを意識しましょう。
太ももやふくらはぎ、上腕などの筋肉を冷やす「外部冷却」は練習後、試合後に行いましょう
(運動中の外部冷却はパフォーマンスの低下を招くおそれがあります。ただし、けいれんなど熱中症の症状が出ている場合は患部を冷やしてください)

普段の練習中・試合中に深部体温を下げる効果的な方法は以下の二つです
アイススラリーは凍らせたスポーツドリンクなどをシャーベット状にした飲料で、摂取することで深部体温を下げる、あるいは上昇を抑える効果があります。
練習前、練習中の休憩時にこまめに摂取しましょう。目安は1回にコップ1杯程度です
アイススラリーが用意できない場合は、溶けないくらいの量の氷を入れた飲料(水筒を振るとじゃらじゃらと音が鳴るくらい)を飲んだり、氷を口に含んで溶かしたりすることでも冷やす効果が期待できます
ミキサーあり
ミキサーなし
アイススラリーの摂取とともに習慣づけたいのが、手のひら冷却です。
手のひらには動脈と静脈を結ぶ血管の部位(動静脈吻合)があり、体温調整に重要な役割を果たしています。ここを通る血液を冷やすことで、冷たい血液が体の深部に戻り、深部体温を下げることができます。「手掌(しゅしょう)冷却」とも言います

バケツなどに水をはり、氷で10~15度程度に冷やす
- *冷やし過ぎると効果は見込めません
- *アイスノンなど繰り返し使えるものも便利です
数分から10分程度、両手のひらを①に浸す
- *足裏にも同様の血管部位があり、くるぶしから下くらいの足を冷やす「足底冷却」でも深部体温を下げる効果が見込めます
もっと簡単にペットボトルを使う方法もあります。
水やスポーツドリンクが入ったペットボトルを冷蔵庫で冷やします。冷蔵庫から取り出したペットボトルを休憩中や攻撃時にベンチに座っているときに、握ったり、手のひらで転がしたりしましょう(凍らせたペットボトルでは温度が低すぎます)
*登板中の投手は利き腕ではない方の手のひらを冷やしましょう

- ①飲料の入ったペットボトルを冷蔵庫やクーラーボックス等で冷やします(凍らせると冷たすぎます)


- ②数分から10分程度、手のひらで挟んだり、包んだりします
アイススラリーの摂取、手のひら冷却を含め、普段の練習や練習試合でできそうな対策をまとめました。
できそうなものを採り入れてみてください
練習前、練習試合前
- 選手
- マネージャー
- 指導者
具合が悪くなった選手を
休ませる場所を決めておく
グラウンド近くの冷房のある部屋、
扇風機や水道が近い日陰、
風通しのよい木陰など

- 選手
- マネージャー
- 指導者
複数のバケツに
水を張っておく
手のひら冷却、足底冷却のほか
緊急時にも利用できる

- 選手
- マネージャー
- 指導者
多めの氷、複数枚のタオル
(バスタオル)を用意する
氷の用意が設備上、難しい場合は
土日の練習や練習試合のときだけでも

- 選手
- マネージャー
- 指導者
ホース、扇風機を
用意する

- 選手
- マネージャー
- 指導者
服装も工夫を
メニューによっては
ハーフパンツ、Tシャツも可とする

- 選手
- マネージャー
- 指導者
アイススラリー、
氷入り飲料などを用意
手のひら冷却用の
ペットボトルも冷やしておく

- 指導者
緊急時用の
経口補水液を用意

- 指導者
アイススラリーの
摂取を促す

- 選手
練習(試合)開始直前に
アイススラリーを飲む

- 選手
食事から時間があく場合は
おにぎりなどの補食を

練習中、試合中、練習後
イニング間インターバルのある野球は試合中にこまめな休憩がとりやすいスポーツです。普段の練習からこまめなパークーリング(運動中冷却)と水分補給の習慣をつけましょう。
長時間のノック、打撃投手(捕手も)、ランメニューなど休憩が挟みにくい練習のときは特に注意が必要です

- 選手
- マネージャー
練習メニュー継続中、一定間隔(15分ごとなど)で笛を吹くなどして水分補給するタイミング等を知ってもらい注意を促す

- 指導者
練習メニュー継続中、一定間隔で水分補給などのインターバルを設ける

- 選手
負荷の高いメニュー終了後や長めの休憩、試合の5回終了時には手のひら冷却をする

- 選手
アイススラリーや氷入り飲料を飲み、氷囊などで頭部や首の後ろも冷やす
試合中は、攻守交替のタイミングでベンチへ戻った際に、どれだけ内部冷却ができるかが大事です

- 選手
- マネージャー
- 指導者
運動量が多い投手や、長く塁上にいて休憩できていない選手は注意
試合中は、運動量が多い投手は特に注意が必要です。
また攻撃時に出塁し、長く塁上にいて、そのままチェンジとなって守備についたときや、守備の直後の打席で出塁し、長く塁上にいるときはリスクが高まっています。本人だけでなく周囲もより注意を払いましょう

- 選手
- マネージャー
試合後は、筋肉など体表面を冷やす「外部冷却」を
試合後は、翌日以降に向けたリカバリーのため、筋肉など体表面を冷やす「外部冷却」を行いましょう

- 選手
- マネージャー
朝練の後や塾がある日の放課後の練習後にはおにぎり、パンなどの補食を

予防策を講じていても、熱中症になってしまうことはあります。2023年に全加盟校を対象に実施した高校野球実態調査*では、「過去5年間で練習中に選手が熱中症になったことがありますか」との問いに、約8割の指導者が「ある」と回答しています。
「大丈夫だろう」ではなく「熱中症かもしれない」と考え、早めに対処しましょう
*「高校野球実態調査」 日本高野連と朝日新聞社が硬式野球部がある全国の加盟校を対象に5年に1度実施している。23年の対象校は3,818校でした

程度別の対処法の前に、万が一のときに学校でもできる応急処置「ローテーションアイスタオル法」を紹介します。
緊急時に特別な設備がなくてもできる処置なので、ぜひ覚えておいてください
応急処置「ローテーションアイスタオル法」とは
重篤な熱中症が疑われる場合は救急車を呼びますが、救急隊が到着するまでの間も、できるだけ早く体を冷やすことがとても重要です

このローテーションアイスタオル法は学校グラウンドででも実施できる応急処置です


| 重症度 | 症状 | すること |
|---|---|---|
| 重症 |
|
![]() |
| 中程度 |
![]()
|
できるかぎり上記の処置をしつつ、医療機関を受診する |
| 軽症 |
![]()
|
改善しない場合 → 医療機関へ |
症状
高校野球での熱中症はどんな症状が多いのでしょう。阪神甲子園球場での第106回全国選手権大会(2024年)と第107回大会(2025年)での選手の熱中症疑いの症状は以下の通りです。
106回大会=58件、107回大会=24件
(複数症状はそれぞれカウントしています)
「下半身のけいれん、つり、痛み」(計71件)
「上半身のけいれん、つり」(計12件)
「吐き気、めまい、気分不良」(計4件)
「脱水症状、尿が出にくい」(計2件)
「両手指、足のしびれ」(計1件)
「過呼吸」(計1件)


傾向(105回大会34件、106回大会58件、
107回大会24件などの分析から)
- 初戦は特に注意
- 初戦期間の発生は105回が25件で74%、106回が35件60%、107回が16件67%を占めています。サンプル調査した一部の地方大会でも同様の傾向が出ています。
理由としては暑さに加え、「初戦ならではの緊張」や「集大成の大会にのぞむ気持ちの高ぶり」などが影響していると考えられます。大会初戦は特に注意が必要です。
- 第2試合の時間帯に多い
- 午前10時半ごろから始まる従来の第2試合の時間帯が最も選手の熱中症疑いが発生しやすくなっています。気温が上昇する時間帯にあたることが影響しているとみられます。
- 繰り返しやすい
- そのシーズンに熱中症(のような症状)を経験している選手(既往症がある選手)は再び、熱中症になりやすい傾向が見られます。
- 途中交代につながる
- 熱中症疑いのため試合途中で交代を余儀なくされたケースは105、106回ともに13件、107回は12件でした。
- 試合後半が多い
- 試合中発症のうち85%以上が6回以降です。
- どのポジションでも
起こりえる - 内訳は外野手55件、内野手31件、投手18件、捕手11件(出場なし1件)となっています。
全国高校野球選手権大会では
5回終了時にクーリングタイム(107回大会は8分間)を設け、理学療法士の指導のもと、以下のような取り組みを行っています
-
サーモグラフィーでの体表温測定
-
アイススラリーの摂取
-
ペットボトルでの手のひら冷却
-
ネッククーラーで冷やす
クーリングタイムに限らず、攻撃時のベンチでも -
冷却パックや氷をビニール袋に入れた氷囊で
頭や脇の下を冷やす -
扇風機(置き型ファン)を使用
-
着替えの推奨
-
経口補水液の摂取
アイススラリーの摂取や手のひらなどの冷却はクーリングタイム以外でも促し、試合前にはおにぎりやゼリーなどの補食を提供しました


- ●Tシャツ、短パンでアップやトレーニング、ティー打撃をする。シャツ出しOKとしている
- ●日陰(ピロティ)を使用し、ティー打撃を実施している
- ●小休止のかわりに、“いつでも飲みたい時”に給水を良しとしている
- ●ベンチ裏に小さい子供用のプールを設置しいつでも水が浴びられるようにしている
- ●アップの際は、500mlのペットボトルを各自1本ポケットに持ち、常に水分補給ができる状態にしている
- ●ノックの際に各ポジションに水分補給の準備をしておく
- ●練習後、冷水でシャワーを浴びるようにしている
- ●教室などエアコンの効いた部屋で休憩させている
- ●塩分タブレットを常に補充し、15分単位でメニューを組み水分補給をこまめにする
- ●休憩時間を多くとる。しっかり食べて、睡眠をとらせる
- ●補食を持参する
- ●練習時間を早める(6:00~や7:00~など)
- ●氷嚢を多数準備して自由に使用する
- ●テントを張って影の場所を作る
- ●アップ後にアンダーシャツの着替えをしている。着替えを頻繁に行う
- ●クーリングタイムは着替えられる物全て(ソックスも含め)を着替えている
- ●グラウンドでのメニューを減らし、活動を短くしている
- ●グラウンドにプールを設置している
- ●練習前後の体調チェック
- ●手のひらや手首を冷やす
- ●睡眠指導をする
- ●日よけテント、大型ファン、スポットクーラーの設置
- ●こまめなグラウンドへの散水
- ●グラウンドの両ベンチには塩分タブレットを用意し、ミストシャワーを設置している
- ●朝の練習では水分を多めに摂るよう指示している
- ●冷却用のネックリングの積極的な使用を促している
- ●ヘルメットを白にした
- ●バックネット裏に冷蔵庫を設置した
- ●経口補水液を常備しておく
- ●アイスジャケットを着用する
全国選手権大会では理学療法士の団体「アスリートケア」のみなさんが健康面のサポートをしています。普段の部活動で使える体調チェック表をつくってもらいました。印字して活用してください
自分の体の調子についてのチェック項目
”いいえ”にひとつでもチェックが入っていれば、いつも以上に水分補給、深部冷却に注意し、練習・試合に臨んでください。
( )内は要注意事項です。各項目( )内の症状がある場合は、指導者に相談しましょう
- ①良質な睡眠はとれていますか?(睡眠不足)
- ②3食規則正しく摂れていますか?(食事量減少)
- ③体重は減っていませんか?(体重減少)
- ④体調不良ではないですか?(下痢、嘔吐)
- ⑤風邪気味ではないですか?(微熱、咳、頭痛)
- ⑥精神的にも体力的にも疲れてないですか?(疲労蓄積)
- ⑦体熱中症について理解していますか?
(例:のどの渇きを感じる前に飲水するなど)
練習場所が変わっても、試合前にも、最大限できる準備をしておこう






































