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指名打者(DH=Designated Hitter)について 【公認野球規則5.11】

高校野球では令和8(2026)年度シーズンインから指名打者制を採用します。

シーズンインへ向け、審判規則委員会が指名打者についての要点を解説し、実際の試合で想定される具体的な事例について紹介します。

1.規則5.11(a)に基づく要点解説

(1)
試合開始前の申告が必須 【5.11(a)(1)】
指名打者制度を使用する場合、試合開始前にオーダー表に指名打者の指名と打順を明記し、本部、相手チームおよび審判委員に正確に申告する必要があります。申告を怠ると、その試合ではDHを使用できません。
(2)
打順表に記載された指名打者の義務 【5.11(a)(2)】
試合開始前に交換された打順表に記載された指名打者は、相手チームの先発投手に対して、少なくとも1度は、打撃を完了しなければ交代はできません。(俗にいう「当て馬」はできない)ただし、その先発投手が交代したときは、その必要はありません。
(3)
チームが指名打者を使用するか選択できる 【5.11(a)(3)】
チームは必ずしも投手に代わる指名打者を指名しなくても構いませんが、試合途中から指名打者を使うことはできません。

5.11(a)(1)(2)(3)

(4)
指名打者に代打を送る 【5.11(a)(4)】
指名打者に代えて代打者を使うことは可能です。(例1)
指名打者に代打が出た場合、その代打者が新たな指名打者になります。
(例1)
(5)
指名打者を守備につかせる 【5.11(a)(5)】
指名打者を守備につかせることは可能です。
その際、指名打者消滅となり投手は退いた守備者の打順を受け継ぐ。(例2)
2人以上の交代が行われたときは、監督が、打撃順を指名しなければなりません。
(関連事例:3.ケーススタディ:ケース①参照
(例2)
(6)
指名打者に代走者を送る 【5.11(a)(6)】
指名打者に代えて代走者を使うことは可能です。
指名打者に代走が出た場合、その代走者が以降の指名打者の役割を引き継ぎます。
(7)
投手が一度他の守備位置につく 【5.11(a)(8)】
投手が他の守備位置につくことは可能です。その場合指名打者の役割は消滅します。
(8)
代打者または代走者が試合に出て、そのまま投手になった場合 【5.11(a)(9)】
代打者または代走者が、そのまま投手になることは可能です。その場合指名打者の役割は消滅します。
(例2)
(9)
投手が指名打者の代打者または代走者になる 【5.11(a)(10)】
投手が指名打者の代打者または代走者になることは可能です。その場合指名打者の役割は消滅します。試合に出場している投手は、指名打者に代わってだけ打撃または走者になることができる。
(関連事例:3.ケーススタディ:ケース②参照
(10)
指名打者が守備位置につく 【5.11(a)(12)】
指名打者が守備位置につくことは可能です。その場合指名打者の役割は消滅します。
(11)
他の守備位置についていたプレーヤーが投手になる 【5.11(a)(14)】
他の守備位置についていたプレーヤーが投手になることは可能です。その場合指名打者の役割は消滅します。
(12)
指名打者のブルペンでの行為 【5.11(a)(15)】
指名打者は基本的にベンチで試合に参加することが前提です。ただし、投手や捕手の交代準備のためにブルペンで練習を行うことは制限されていません。
DH消滅になるケース
投手が他の守備についた場合 5.11(a)(8)
代打者または代走者の試合に出て、
そのまま投手になった場合
5.11(a)(9)
投手が指名打者の代打者
または代走者になった場合
5.11(a)(10)
指名打者が守備についた場合 5.11(a)(12)
他の守備位置についていた
プレーヤーが投手になった場合
5.11(a)(14)

2. 規則5.11(b)について

規則5.11(b)は、先発投手自身を指名打者として同時に出場させることを認めるルールです。
いわゆる「大谷ルール」と呼ばれているものです。

5.11(b)について

1人の選手が「投手」にも「指名打者」にもなれる特別なルール

【背景】
通常DH制度は、投手は守備専門。指名打者は攻撃専門。
しかし、投手でもバッティングが得意な選手がいる。

【目的】
・二刀流選手の活躍が広がる

ケース 結果 備考
大谷がP+DHで先発出場
大谷がP+DHで先発出場
投手を退いた場合でも指名打者は継続
一度退いた役割に再度つくことはできない
大谷がP+DHで先発出場
指名打者を退いた場合でも投手は継続
一度退いた役割に再度つくことはできない
大谷が両方退いたあと、山口がP+DHで出場 × 5.11(b)後段
山口を投手に、井上にDHする

3. ケーススタディ

実際の試合で想定される具体的な事例を取り上げ、その適用や判断の根拠を説明します。
指名打者制度は、投手交代や守備位置の変更などと複雑に絡み合うため、注意が必要です。

掲載ケース一覧
ケース 詳細
複数選手の交代があるとき
投手が打撃するか
または走者になる場合
臨時代走と指名打者
自動的に投手交代になる場合
同じ役割に再度つくことはできない
先発投手兼DHが打撃未了のまま
交代した場合について
ケース① 複数選手の交代があるとき
(例)
3番DH高橋を「8」へ
1番佐藤を「9」へ
控え選手 吉田を「7」へ

DHが消滅する(DHが守備につく)
同時に複数の選手が交代となる

  • ・加藤投手の打順が「6番」or「8番」かを指名する
  • ・その結果、吉田の打順が決まる
ケース② 投手が打撃するかまたは走者になる場合
試合に出場中の投手が
指名打者の代打または代走
○可能
試合に出場中の投手が
指名打者以外の代打または代走
×不可
ケース③ 臨時代走と指名打者
パターンA(DHが投手を兼任していない場合)

投手兼任でないDHは臨時代走者になる
「3田中」が頭部死球

パターンB(DHが投手を兼任している場合)

投手兼任のDHは臨時代走者にならない
「3田中」が頭部死球

ケース④ 自動的に投手交代になる場合
  • 試合開始時試合開始時
  • 試合開始時
  • 4回守備時4回守備時
  • 試合開始時
  • 7回守備時7回守備時
【試合開始時】
投手兼任DHで試合開始。
【4回守備時】
3番DHを山口に交代。
【7回守備時】
6番レフト渡辺負傷交代。DHを消滅させて山口をレフトの守備へ
この場合、投手大谷は打順6番に入ることはできない。(5.11(b)に抵触)
よって、規則により投手交代が必要になる。
※少人数のチームの場合、交代選手がいない状況にならないように注意が必要
ケース⑤ 同じ役割に再度つくことはできない
  • 試合開始時試合開始時
  • 試合開始時
  • 5回守備時5回守備時
  • 試合開始時
  • 8回守備時8回守備時
【試合開始時】
投手兼任DHで試合開始。
【5回守備時】
投手を井上に交代。3番DH大谷は継続出場。
【8回守備時】
投手の井上を交代させたい場合、再度大谷を投手につかせることはできない。
そのとき、大谷を他の守備位置につかせることはできる(DH消滅)。
(野球審判員マニュアル第5版 指名打者 例題12)
またその後、大谷を投手に再度つかせることはできない。
(野球審判員マニュアル第5版 指名打者 例題13)
ケース⑥ 先発投手兼DHが打撃未了のまま交代した場合について
【試合開始時】
後攻、投手兼任DHで試合開始。
【1回表】
先発投手大谷が乱調
投手交代。
(1)大谷がベンチに退くケース

1回表大谷をベンチに退かせること→可
その後、DH高橋は試合開始時の指名打者ではないので、打撃義務は生じない。

(2)大谷がDHとして試合に出場し続けるケース

1回ウラ大谷は打撃義務がある

(3)大谷が他の守備位置につき試合に継続出場するケース

1回表にDHが消滅しており、1回ウラに大谷への代打も認められる。

出典:野球審判員マニュアル第5版2026修正一覧
全日本野球協会 ホームページ掲載

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