加盟校の中には、地域のための活動する学校は少なくありません。一見、野球とは無関係にもみえる活動に、なぜ取り組んでいるのでしょうか?
今回は、地域の高齢者らと交流している3校の取り組みを紹介します。
介護施設との交流――和歌山県立紀央館高校
和歌山県立紀央館高校(御坊市)は、市内にある認知症の方々が利用されている地域密着型複合施設「あがら花まる」の利用者との交流を8年前から続けています。
きっかけは学校のインターンシップで、野球部員が施設を訪れたことでした。その後、夏の和歌山大会の前に、利用者が千羽鶴を折ってくれるようになりました。「高校生とのふれあいが高齢者の生きがいになっている」と施設側から聞き、定期的な交流になりました。
昨年6月には、応援で使うネームボードをマネジャーが利用者と一緒に作成。選手権大会前にホームで激励会が開かれ、野球部全員で訪れて千羽鶴を受け取りました。
使い古したボールの皮をはぎ、黄色いテープを巻いてティー打撃用に再生する作業を一緒にしたこともあります。マネジャーの滝本心絆さん(2年)は「とても楽しそうで、一生懸命やってくださいました」と、会話も弾んで楽しめたといいます。
11月には、施設で定期的に開催しているマルシェに、監督、部長をはじめ全員で参加しました。力仕事のテントを立てる準備段階から手伝い、当日はフリーマーケットの販売のお手伝い、利用者の買い物に同行するグループに分かれるなどして、終日一緒に過ごしました。久保陽主将(2年)は「お年寄りと話すことで、チーム内のコミュニケーション力も上がって、堂々と自分の意見を言えるようになっています。ピンチになっても頑張れと言ってくれたことを試合中に思い出したりして力になります」と励みになっているといいます。
初めて高齢者と話した時、西綾月選手(2年)は「どういうふうに話しかければいいのだろう」と戸惑いもあったものの、何度か顔を合わすうちに笑顔で話しかけながら相手に対する配慮もできるようになったということです。
宮本裕司部長(43)は「知らない人と交流することで思いやりが育まれ、会話の中で自分の考えをしっかり言葉に出来るようになるなど、生徒たちの成長につながっています」と話します。堤裕彦監督(43)も「お年寄りとの交流は手をつないだり、支えたり、すごく対応能力を求められます。人間性を磨くのに大いに役だっています」と感謝しています。
独居高齢者宅での除雪作業――北海道・稚内大谷高校
稚内大谷高校(北海道稚内市)は冬場に自力で除雪が難しい独居高齢者宅の除雪作業を手伝っています。1986年に当時の野球部長、山下優さんの呼びかけで始め、今年も1月14日に1,2年生部員14人が三つのグループに分かれて、午前9時から高齢者宅を訪ねて回りました。
独居老人宅の周辺を除雪する部員ら=2026年1月窓が埋まるほど高く積もった家の周囲を覆う雪を大きなスコップですくい、決められた雪捨て場まで運びます。氷点下8度前後で強い風も吹く厳しい寒さの中での作業ですが、固まって重くなった雪をかいたり、運んだりするうちに汗だくになり、昼食時には風邪をひかないように着替えます。
この日は14時半までに計77軒を訪問し、44軒の除雪を行いました。石動泰雅主将(2年)は「疲れるけど、除雪した家の方にありがとうと喜んでもらえる。活動を通じて地域の人に稚内大谷の野球部を気に掛けてもらえて、野球も頑張ってねと応援してもらえるのがうれしい」と話します。
ほかにも、4月に「春の交通安全キャンペーン駅伝」を行っています。1982年に始まり、昨年は日本最北端の宗谷岬までの国道約30kmを3区間に分けて交通安全のタスキをつなぎながら走破、稚内警察署交通課の方々も併走し、ドライバーに交通安全ストラップやチラシを配布しました。
また、少年団の野球教室も行っています。一緒に練習しながら、小学生にバッティングや守備を教えています。いつもは教わる側の部員たちですが、教える側になるとどういうふうに伝えたらわかりやすいだろうということを考える必要があります。
澤田橙茉さん(3年)は「普段から応援してもらっている方々の役に立ちたいと思ってやってきましたが、いろんな活動を通じて自分の成長を感じました」と振り返ります。
稚内市も過疎化、少子高齢化は著しく、除雪を始めたころ約5万1000人だった人口は40年間で2万9000人台まで減少。65歳以上が33%を占める一方、10代は14.8%まで減っています。
本間敬三監督(41)は「稚内大谷は1963年に市民の要望を受けて、市内唯一の私学として設置されました。地域に根づいた学校として、野球部員には地域に愛される存在になり、人間的にも成長してほしい」と話します。活動を通じて部員たちに親しみを持った近所の人がグラウンドに練習を見に来たり、試合結果を気にかけてくれたりしています。
餅つきや荷物運びで力に――奈良県立商業高校
奈良県立商業高校(桜井市)は、学校近くにある二つの施設と交流を続けています。
道路を挟んで向かいにある介護施設「デイサービス おたがいさん」では、大きな荷物の移動や大掃除を手伝うなどしています。お礼として、オフシーズンには、土曜日の練習時に豚汁などの差し入れを受けています。
差し入れを受け取った部員ら=2025年12月特別養護老人ホームなどを併設する高齢者施設の「大和桜井園」では昨年12月、部員全員で餅つきに参加しました。かけ声を掛けながら交代で杵を振り下ろし、つきあがった餅を高齢者の方々と一緒にまるめ、ぜんざいに入れてふるまいました。
一緒に食べながら利用者の方と話をし、校名変更前の桜井商業高校時代の1970年代にエースで4番として活躍した駒田徳広さん(元巨人、横浜)の思い出話を聞くなどし、激励を受けました。
また、地域の方との交流を増やしたいと地元の桜井市に声かけしていたところ、トマトを育てるビニールハウス作りを手伝ってほしいという依頼を受けました。しゃがんだ姿勢で50cm間隔にくいを打っていくのは慣れない作業でしたが、依頼主には通常なら1週間かかる骨組みを半日で組むことができたと喜んでもらえました。
上田來輝主将(2年)は「励まされるのはうれしい。温かい差し入れも楽しみで、しんどい練習を乗り切る原動力になります」と感謝。中尾篤史さん(1年)は「最後まであきらめずに信頼して任される人になりたい」と話しています。
岡田優太部長(30)「ビニールハウス作りを手伝った生徒たちは疲れていても、とても充実した表情をしていました。交流を通じていろいろな価値観を身につけて、広い視野を持った大人になってほしい」と期待しています。
全国の加盟校では、野球部としてさまざまな活動を行っています。異なる環境のなか、それぞれが考え、動きながら高校生活を過ごすことが人間としての成長につながっています。意欲的に活動や取り組みを行っている加盟校の部員たちの、いきいきと輝く姿を紹介していきます。










