試合での礼はいつから?
高校野球では試合の始まりと終わりに必ず、選手たちがホームベースを挟んで整列して礼をします。これはいつから行われているか、ご存じですか?
実は、全国選手権大会の第1回大会から行われています。
1915(大正4)年の第1回全国中等学校優勝野球大会(現在の全国高校野球選手権大会)の開催に際して、11カ条の規則を制定するとともに、ホームベースをはさんで両チームがあいさつをする「試合前後の礼式」を行うことも決めました。
当時は大会前に選手たちが一堂に会して茶話会を行っており、その場で平岡寅之助副審判委員長は「徳義を重んじる勇者の試合には、必ず付随すべき礼儀として制定した」と話しています。
開幕3日前の朝日新聞には、試合前のあいさつの作法について紹介されています。現在と違うのは、キャプテンは選手たちの列の前に立ち、また、審判長はホームベースを挟んでマウンド側に立ちました。敬礼の後、審判員を選手に紹介した後、選手を審判員に紹介してから試合が行われていました。
「礼に始まり礼に終わる」という言葉もあるように、当時の関係者らは、試合に携わるすべての人に感謝と敬意を払うことが大切であると考えたのでしょう。それは西洋で生まれたスポーツマンシップの精神とも相通じるものでもあります。
呼吸を合わせる
一般的にあいさつには「語先後礼」の考え方があります。先に発声し、その後、お辞儀をするという方式です。高校野球の指導者や選手の中には、これに基づいて行動している方もいるでしょう。しかし、高校野球の試合では、言葉とお辞儀を同時に行うよう指導しています。
試合の前後、審判委員は両チームに対して「始めます、礼」「終わります、礼」と声をかけます。これに合わせて、選手たちが「お願いします」「ありがとうございました」と言いながら帽子を取って頭を下げる。この流れを高校野球では理想としています。
日本高野連審判規則委員会は毎年、「重点指導事項」をまとめて都道府県の高野連に発信しています。2017(平成29)年の「重点指導事項」では、礼について取り上げました。
相手チームが頭を下げた後、ワンテンポ遅れてお辞儀をする。
お辞儀の動作と発声のタイミングがバラバラで全員がそろわない。
――といったように呼吸が乱れることないよう、注意を促しました。
試合前の攻守決定時に、審判委員から主将に「両チームしっかり呼吸を合わせて礼をしていこう」と伝えることもあります。
打席に入る時
球審から新しいボールを受け取る時
伝令が白線を越える時
五回終了時のグラウンド整備をしてくれる方々へ
チーム同士の礼の後、再度、審判委員へ
――など、ことあるごとに礼をする選手もいます。感謝の気持ちを表すことは尊いことではありますが、やりすぎてしまうのはスムーズな試合進行に影響することもあります。テンポ良く試合をするためにも、礼は試合の前後にしっかりと気持ちをこめて行い、試合中は行わないということを理解してもらいたいと思います。
国際大会でもフェアプレーの精神を忘れずに
U-18のワールドカップやアジア選手権などの国際試合では、試合前後に日本の高校野球のように両チームがホームベースを挟んで礼をすることはありません。
試合前は一、三塁の白線に沿って整列し、監督やスタッフ、選手を順に紹介するアナウンスに帽子を取って応えます。両チームの国歌斉唱の後、両チームの選手が握手を交わして守備位置につくとプレーボールがかかります。
試合後は特にセレモニーはありませんが、ゲームセットがコールされた後、相まみえた選手たちが自発的に「ナイスゲーム」などと声を掛け合いながら握手を交わしたりする光景は見られます。
たとえ礼はしなくても、相手をリスペクトし、スポーツマンシップ、フェアプレーの精神を持って戦い、試合後には健闘をたたえ合うことが大切です。