
全国高校野球選手権大会の地方大会に向け、第65回全国審判講習会を5月5、6日、阪神甲子園球場で開催しました。47都道府県連盟から推薦された審判委員48人(北海道からは2人)と、昨年から加わった女性の審判委員6人の計54人が受講。「最後の夏。選手達の最高のシーンに、魂のジャッジを添える!」をテーマに、春、夏の甲子園で審判委員を務める講師のアドバイスを受けながら、実技や座学でのグループ討論などに取り組みました。受講生には、各都道府県に戻って講習内容を他の審判委員に伝えていくことが期待されています。

今年の講習会では、「ジェスチャーの統一」に重点を置きました。開講式で日本高校野球連盟の尾崎泰輔・審判規則委員長は「大学、社会人、軟式野球など高校野球以外のカテゴリーの審判を兼ねる人もいます。規則の運用、判定のジェスチャーが高校野球と違うと大変苦労します。できるだけ垣根をなくし、その苦労を少なくしていければ」と話しました。

審判規則委員会は昨年から、日本野球機構(NPB)のアンパイア・スクールや全日本大学野球連盟、全日本軟式野球連盟の審判講習会にメンバーを派遣したりNPBの森健次郎・審判長に甲子園の大会を視察してもらったりするなど他団体と活発に交流しています。それらの成果も踏まえ、「球審によるハーフスイングの判定」などで、他のカテゴリーと合わせた新たなジェスチャーも採用することにし、2025年版の「高校野球 審判の手引き」に盛り込みました。従来のジェスチャーと、どちらのジェスチャーを行ってもよいとし、今春の第97回選抜大会から、新しいジェスチャーも採り入れています。
「審判の手引き」には、「ジェスチャーの統一」という項目があり、選手や観客にも分かりやすいジェスチャーを具体的に示しています。
今年度の改定で、以下の項目については、従来のジェスチャーに加え、他のカテゴリーを参考とした新たなジェスチャーを「GUIDE」として追記し、いずれのジェスチャーを行ってもよいとしています。
- ・「ハーフスイングを球審が判定する場合」
- ・「フェア・ファウルの場合」
- ・「ラインアウトを宣告する場合」
- ・「打者が第三ストライクの宣告を受けただけで、まだアウトになっていない場合」

5日の座学では、審判規則委員の前坂金哉さんが選抜大会の映像を映しながら、四つのケースを解説し、感想や注意点を伝えました。例えば、ライン際の飛球を判定する「フェア・ファウルの場合」の内容は以下の通りです。
従来は、
- (1)
- フェアのときは、片手を肩の線に合わせてポイントする(ノーボイス)
- (2)
- ファウルのときは、両手を肩の線より高く上げて「ファウル」または「ファウルボール」を宣告する)
――としてきました。
追記された【GUIDE】では、
「ファウルライン付近に打ち上がった飛球に対して、野手がその打球に触れた場合(野手の腰から上)は、次のようなジェスチャーを行ってもよい。
まず先に、フェア地域側またはファウル地域側のどちらで触れたかを地面と平行に(フェアのジェスチャーのように)指差しする。
その後、プレイに応じて、キャッチ、ノーキャッチ、またはファウルの判定をする」
としています。つまり、野手が飛球に触れた地域がフェアかファウルかをまず示してから、キャッチしたかどうか判定するという二段階のジャッジが紹介されています。
前坂さんは「ライン際の飛球で難しいのは、野手がフェア地域で飛球に触れ、走る勢いが余ってファウル地域で落球したときの判定です。あくまでフェアですが、ファウルだと判定を変えてしまう人もいます。慌てずにやりましょう」とアドバイスしました。

5日にあった実技の模擬試合では4人のクルーで1イニングずつ、球審や各塁審をこなし、新たなジェスチャーを採り入れている受講者もいました。フォースプレイの判定練習では各塁での適切なポジショニングを確認しました。6日はあいにくの雨となり、室内練習場で投球判定や発声・ジェスチャー、盗塁判定などを練習しました。
沖縄県の大城康弘さん(46)は2019年に続き2度目の参加でした。「現在は指導的な立場にもなり、伝えていくことの難しさを痛感します。今後も高校野球がずっと続くよう、子どもたちを思いやり、寄り添いながら、信頼されるように頑張ります」と感想を述べました。