
全国から選抜された軟式球児による「全国高校軟式選手権大会70回記念 春の軟式交流試合 in 甲子園」(日本高校野球連盟主催、全日本軟式野球連盟、朝日新聞社、毎日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が5月5日、阪神甲子園球場で開かれました。五月晴れの暖かい日差しが降り注ぐ中、憧れの舞台で躍動する選手たちのプレーを観客約3100人が見守り、温かい声援を送りました。
試合に先立って開始式が行われ、日本高野連会長の寶馨実行委員長が「軟式野球は日本の文化の一つ。選抜チームに参加する君たちはその誇りを持って、憧れの舞台で存分にプレーして野球を楽しんでください」と激励。その後の選手宣誓では、東日本チームの新井絢斗主将(作新学院)が「私たちは歴史と伝統のある軟式野球の魅力をさらに発展させ、新たな時代へとつないでいく必要があります」と、西日本チームの佐藤奏太主将(鹿児島)が「この甲子園の地に立った私たち全員は、軟式野球の魅力を全国の皆様に届けられるよう全力でプレーすることを誓います」など、それぞれ決意を述べました。
球場入りの際にはやや緊張した表情も見せていた選手たちも、室内練習場でのウォーミングアップや試合前ノックを通じて硬さもほぐれたようで、午前11時過ぎの試合開始とともに、笑顔が目立つように。投打に軽やかな動き、好プレーが飛び出し、観客を魅了しました。試合は先制点を挙げて、終始リードした西日本が3―0で勝利しました。
吹奏楽部も駆け付け、スタンドから熱い声援
交流試合は、軟式野球の魅力を発信し、さらなる普及と振興を図るための試みとして企画されました。観客として、出場選手の関係者のほか、小中学生の軟式野球チームも招かれ、試合の模様はインターネットのライブ中継を通じて全国にも発信されました。
スタンドに駆け付けた出場選手たちのチームメートは、北は北海道から南は鹿児島まで39都道府県を数え、天理(奈良)、河南(大阪)、育英(兵庫)の各校は吹奏楽部も参加し、軽やかな演奏で応援を後押し。スタンドの生徒らは演奏に合わせて大きな声援を送り、選手を鼓舞していました。百人を超す応援が駆け付けた天理の勝又瑠威選手は「たくさん駆け付けてくれていたのが試合中も分かった。とてもありがたかった。楽しめました」と感謝していました。
また、大阪府八尾市から来た中学校の軟式野球部員は「甲子園に立てるなら高校でも軟式を続けようかな」と話していました。
試合後、東日本の西山康徳監督(仙台商)は「軟式野球の全国大会は年1回しかない。もう一つ大きな大会が開かれたことはすごく大きなことだと思う。私は高校3年間で選手たちに大きな目標を持たせてやるということが、一番大切だと思う。甲子園というチャンスを与えてもらったことに感謝したい」と話しました。
「高校軟式野球にとって記念すべき日に」
選手たちは試合前日の4日昼過ぎに兵庫県入りし、宿舎でチームごとにミーティングを開きました。軟式球の特徴である弾みやすさを利用した「たたき」と呼ばれる打撃をしたり、機動力を生かして1死三塁のチャンスを作ったりしようとするなど、試合運びの狙いについてなどを確認。その後、試合用ユニフォームを着用した練習でも、軟式らしさを発信したいとして、細かいプレーを繰り返しました。
試合には、各チーム25人の選手全員が出場。選抜によるチーム作りで、事前合宿もなかったため、選手起用にも苦労や工夫があったようで、西日本の浅井重行監督(開新)は試合後、「選手をどのように起用するかは難しい課題でしたが、チームを前後半に分けて組み立てました。それぞれの選手に出番のタイミングを事前に伝え、組織として機能することを優先して考えました。思い通り一丸となって、組織力を発揮できました」と話しました。
試合後、寶会長は「交流試合は野球人口を広げる意味でもインパクトは大きい。今日は記念すべき日になったと思う。軟式野球を70回も明石、姫路でやっていることを知らない人もいるが、そちらにも光が当たった。甲子園という光は、それだけ大きくて強い。チームの皆さんにもアンケートを取っているので、(来年以降も)ぜひやってほしいということになれば努力したい」と総括しました。
交流を深め、全国大会での再会を誓う
選手たちは試合終了後、スタンドに残って硬式のモデルチームが参加した試合形式を含む審判講習会を見学。翌日は甲子園歴史館を見学した後、午後からはランニングなどで体をほぐしました。5人1部屋で宿泊し、各部屋では、それぞれの練習方法、戦術、声の掛け方、内外野の連携プレー、能力の高い選手の動きなどについて話し合うなど交流を深めました。また、連絡先を交換し、今後も情報交換などをしていくことなどを約束していました。
7日朝には終了式が開かれ、東日本の尾崎佑成副主将(登別明日中等教育)は「プレーはもちろん、プレー以外の部分でもたくさんいいものを得たと思います。それをしっかり自チームに持ち帰ることで、より高校軟式野球のレベルが上がると思います。そしてたくさんの魅力を伝えられるよう頑張りましょう」と、西日本の杉浦祥太副主将(静岡商)は「甲子園でプレーした興奮や、このチームでできた楽しさを家族や学校、そして自分の地元に持ち帰って、楽しかったこと、得たことをちゃんと話して、これからも軟式野球をもっともっと盛り上げていきましょう。全国大会でまた会えるようお互い頑張りましょう」とあいさつしました。