来春の導入に向けて、審判委員が解説
高校野球では、2026年度から新たに指名打者(DH)制度を採用します。ルールへの理解を深めるため、都道府県高野連関係者を対象とした「DH制度勉強会」を10月14、21日にオンラインで開催しました。参加したのは都道府県連盟の理事長と審判関係者、日本高野連の審判委員らで、14日は約90人、21日は約70人が出席しました。当連盟の審判規則委員会で用意した資料をもとに審判規則委員が説明の後、質疑応答を行いました。今後は都道府県で加盟校や審判、記録担当者らに向けた勉強会などを行い、ルールに習熟していくことが期待されています。

公認野球規則に沿って説明
DHは投手に代わって打つ選手を指名できるというルールで、公認野球規則「5.11 指名打者」に規定されています。
勉強会ではまず、公認野球規則「5.11 (a)」に基づいて、当連盟の審判規則委員が要点を解説しました。DH制度は試合開始前、オーダー表に指名打者の名前と打順を明記して申告する必要があります。チームはDH制度を使用するか選択することができ、これまで通り投手が打順に入ることはできます。ただしその場合、試合の途中からDHを使うことはできません。
注意が必要なのは、DHが消滅するケースです。投手が他の守備についたり、代打がそのまま投手になったりした場合は、DHの役割は消滅します。これらは様々なパターンが想定され、公認野球規則の項目に沿って丁寧に説明されました。
先発投手もDHとして出場可能
また、公認野球規則「5.11(b)」、いわゆる「大谷ルール」についても説明がありました。先発投手がDHとして出場できるというルールで、2022年にMLBでDH制度が全面的に採用された際に、公認野球規則に追記されました。
従来のルールでは、投手が打順に入る場合にはDHは放棄され、試合中に降板すれば、打順の入れ替えも必要になるなど、戦術上の制約がありました。
しかし、このルールができたことにより、先発投手がDHを兼ねることができ、投手交代をしてもDHとしてそのまま出場し続けることができるようになりました。また、指名打者に代打が出ても、投手として続投することもできます。
つまり、投手と指名打者、それぞれの出場が独立して扱われるため、どちらかが交代したとしてももう一方には影響を与えず、柔軟な選手起用が可能になりました。

2022年にMLB全体で採用
制度の背景や歴史、導入の目的についても紹介されました。
DH制度は1973年、米メジャーリーグ(MLB)のアメリカン・リーグで導入されました。当時、投手が打席に立つことで試合の流れが停滞することが多く、「攻撃的な試合展開」や「選手の専門性の向上」を求めるなかで誕生しました。
DH制度の導入により、投手は投球に専念できるとともに、打線には強打者を1人多く組み込むことが可能となり、野球の戦略に大きな変化をもたらし、選手寿命の延長や、打撃に特化した選手の活躍の場の創出などのメリットを生み出したとされています。
ナショナル・リーグはこの制度は採用せず、投手が自ら打席に立つ形がその後も続いていましたが、2022年にナショナル・リーグも含めたMLB全体でDH制度が採用されることとなりました。

投手の負担軽減と選手の出場機会増が狙い
日本ではプロ野球のパ・リーグが1975年に導入し、1988年に社会人野球でも採用されました。2026年からは日本高校野球連盟のほか、東京六大学野球連盟、関西学生野球連盟で導入することが決まっており、プロ野球のセ・リーグも27年から採用します。
高校野球でのDH制導入の目的は、主に投手の負担軽減と、選手の出場機会を増やすことにあります。試合で最も体力を消耗する投手の負担を減らすことで、熱中症対策や障害予防につながることが期待されます。また、これまで出場機会が少なかった選手が、打撃力を生かして試合に出場し、普段の練習の成果を発揮する機会が増えるということも重要な点です。
ただし、ルールについての理解が不十分な場合、守備交代や記録に混乱が生じる恐れもあります。今回の勉強会の内容をもとに、今後も都道府県での勉強会などを通じて理解を深めていき、大会役員、審判員、記録員、指導者、選手らが連携し、新しいルールを円滑に運用していくことを目指します。
