高校野球200年構想育成(栄養学)
球児に必要な食事ってどんなもの?
からだ作りを応援
子どもたちの成長や栄養に関する知識を広げ、体づくりを支援していくため、高校野球200年構想では、球児や指導者、保護者らを対象とした栄養についての講座の開催を助成しています。講座の対象には高校生のみならず中学生も含み、野球教室などと一緒に開くこともできます。
講座の開催を支援するため、日本高野連は日本栄養士会や日本スポーツ栄養学会の協力を得て、資料「指導者・保護者が知ってほしい 球児を育てるための栄養講座」を2024年に作成しました。
資料は約50枚のスライドからなり、
- ・身体が大きく、強くなるために重要なことは?
- ・身体はいつ大きくなるの?
- ・身体を大きくするためにはどれくらいの量を食べればよい?
- ・球児に必要な食事ってどんなもの?
- ・食が細く、一度にしっかりと食べられませんがどうすればいいですか?
- ・試合当日は何を食べるの?食べるタイミングは?
- ・熱中症を予防するには?
などといった質問に答える形で、栄養学に基づいて具体的にアドバイスしています。栄養講座では、この資料をもとに、公認スポーツ栄養士らが講演します。

開催を希望する都道府県連盟には、各県で活動している公認スポーツ栄養士の紹介も行っています。地元の公認スポーツ栄養士との橋渡しを行い、その後も栄養などについての指導が続いていくことを期待しています。
技術指導と一緒に栄養講座・秋田
秋田県では10年以上にわたってオフシーズンにスポーツ科学に基づいた技術指導のための講演会を開催してきましたが、今年は初めて、栄養講座も合わせて行われました。
小雪が舞う秋田市の千秋公園内にある秋田芸術劇場ミルハスで2025年2月1日、「これからの球児に必要なこと」と題した講演会が開かれ、秋田県内の高校27校と秋田市内を中心とした中学の球児やその指導者、保護者ら計約700人が参加しました。

第1部は「秋田から世界へ!スポーツ科学が支えるヒッティングと選手育成」と題して、神事努・国学院大学人間開発部准教授が、スイング速度と筋量との関係、打球速度を上げるための取り組みなどを紹介。科学的な知識をもとに、選手の競技力や指導者の資質の向上を目指す内容でした。
第2部が今年新たに取り入れられた栄養についての講演で、タイトルは、「球児を育てるための栄養講座」。冒頭、日本高野連理事で栄養講座用の資料作成の中心となった立命館大の海老久美子教授が栄養講座の意義を話した後、秋田県で活動する公認スポーツ栄養士の長嶋智子さん、菅野育子さんら4人が登壇しました。

効果的な食事の取り方を紹介
まず、長嶋さんが、主に理論的な内容を分かりやすく説明しました。体づくりのためには、運動、食事、休養のバランスが大切であり、トレーニングと食事によって筋力、持続力、瞬発力、柔軟性、敏しょう性が養われ、競技力向上につながるとし、主食、主菜、副菜、汁物、果物、乳製品などからなるバランスのよい食事の基本構成や睡眠時間、消費エネルギー量と食事量の関係、体重増加の目安は1カ月で体重の2、3%――といったことを紹介しました。
続く菅野さんは、より具体的な内容について話しました。毎食の必要なカロリーについて、中学生は朝食700~800kcal、昼食850kcal、夕食1000~1200kcal、高校生は朝食900~1200kcal、昼の弁当1000~1300kcal、夕食1200~1500kcalとし、それぞれに必要な食事の量も合わせて解説しました。また、タンパク質が豊富なおかずの種類や、簡単で栄養価の高い食事のための工夫なども紹介しました。
一度にたくさん食べられない場合も、補食としておにぎりやパン、乳製品、野菜ジュースなどを合間に食べることを勧めました。スポーツをすることでエネルギーや栄養素の不足を起こさないためにも重要だといいます。
球児たちの食への関心高く
その後の質問の時間では、多くの手が上がり、関心の高さがうかがえました。中学生の球児が「朝食のパンには主にチョコレートクリームを塗って食べているが、何がいいのか」と尋ねると、菅野さんは「チーズなどをのせて焼くのもいいし、ハムやソーセージをのせてピザのようにするのもいい」と答えました。

秋田県の高野連と中体連が事前に実施したアンケートによると、過去にスポーツ選手と栄養についての話を聞いたことがあると答えたのは、高校生が半数、中学生は3割程度でした。興味を持っている内容については、ともに食事と運動能力、野球選手の食事量の目安、野球選手に必要な栄養素が上位を占めていました。
講演を聞いた中学生は「朝食はちゃんと食べているつもりだったけど、量が足りていませんでした。自分は身長の伸びに筋肉量がついていってない感じなので、1日の食事量を見直していきます」と話し、非常に参考になった様子でした。
中学と高校が連携
今回、新たに栄養講座を開催したのは、秋田県高野連の和田史穂理事長の「競技力を上げるためには食事を含めた体づくりが大切。親に任せるだけでなく子どもたちにも自覚を持って取り組んでほしい」という熱意からでした。
体づくりは高校生になる前から重要なため、県中体連軟式野球専門部にも声をかけ、一緒にこの2部構成の講演会を主催となりました。1部で技術的な講演を行った神事さんも「スイング速度を上げるためには体づくりは不可欠。ともに中高生に興味を持ってもらいたいテーマ」と歓迎していました。
和田理事長は「体づくりは中学、高校で連携が取りやすいテーマ。今回をきっかけとし、今後は、もう少し小さい規模で展開していければと思います」と話しました。県中体連の石川央季専門委員長は「こうしてオフシーズンのイベントで高校と連携して行えるのはありがたい。今後も広げていければ」としています。
