高校野球200年構想普及
野球との出会いの機会を創り出す
「集合型」と「訪問型」で実施

かつてのように小さな子どもが気軽に野球に触れることができる機会は少なくなっています。高校野球200年構想では、幼稚園や保育園といった年代の、まだ野球をしたことがない子どもたちに、遊びを通じて野球の楽しさを体験してもらうための「普及(野球未経験者向けイベント)」活動を主要7事業の一つとしています。まずは野球との出会いの機会を創っていくことが目的です。
「普及」の活動には、大きく分けて二つのスタイルがあります。一つは「集合型」で、会場に小さな子どもたちを集め、子ども向けのボールやバットを使って遊ぶといったイベントを行います。
もう一つは「訪問型」で、幼稚園や保育園に出向き、園児たちと一緒に「野球あそび」などを楽しみます。特に高校球児が直接、幼稚園などを訪ねる活動は園側からも好評です。
島根県では、県連盟を挙げて普及活動に取り組み、高校単位で近隣の保育園や幼稚園、小学校を訪問する「1校1園」活動を実施しています。第92回選抜大会(2020年)で、21世紀枠で出場校に選ばれた平田高校は、普及活動に熱心に取り組んできたことも高く評価されました。この流れは中国地区全県に広がり、岡山、広島、山口、鳥取各県の高野連も足並みをそろえて「1校1園」活動を加盟校に推奨しています。

埼玉の高校生が保育園の子どもと野球あそび
蒸し暑さが気になり始めた2025年6月24日、埼玉県宮代町の総合運動公園体育館に、近隣のエール保育園、てんじん保育園の園児計28人が集まりました。園児たちを招いたのは体育館の近くある昌平高校野球部。3年生8人が、子どもたちと一緒にボールなどを使った野球あそびを行いました。

お手本に園児から「すごい」の声
園児は男女4グループに分かれ、各グループに高校生が2人付き、用意された五つの遊びを一緒にしました。野球の手前の、ボールやバットを使った遊びで、投げたり捕ったりしながら体を動かす楽しさを体験してもらうのが狙いです。
用意された遊びは以下の五つです。
- ①紙飛行機を園児に折ってもらい、壁に向かって飛ばして腕を投げ下ろす動作を学ぶ
- ②ボールをいろんな箱に投げ入れる
- ③ボールを投げ上げ、その間に体を1回転して落ちてくるのをキャッチ
- ④ボールを転がしてプラスチックのコップで受ける
- ⑤コーンに置いたTボールを打つ

高校生らは園児たちに「いいよ」「上手」などと笑顔で声をかけながら進めていきます。一方、高校生がキャッチボールやバッティングのお手本を見せると、園児からは「すごい」「格好いい」と声が上がりました。
最初は互いに緊張で硬かった表情も次第にほぐれてきて、子どもたちからは歓声も上がりはじめました。持参した水筒で水分補給する際には「楽しいね」と声をそろえていました。予定していた1時間はあっという間に過ぎていきました。
その後、4チームでの対決。紙コップ45個を積み上げてできたピラミッドに向かって1人ずつ順番にボールを投げて崩し、最下段の中央にある色つきの紙コップを取り出すスピードを競うゲームで盛り上がりました。

野球への関わり方 気づくきっかけにも
最後に手作りのメダルを首に掛けてもらった園児たちは、高校生と一緒に記念写真に収まりました。高校生が「今日は楽しかったね。野球を好きになってくれたらうれしいな」と園児に声をかけ、満面の笑みで再会を誓っていました。
エール保育園の板橋秀憲園長は「最初は緊張していた子どもたちや高校生も交流を楽しんでいる様子が伝わってきました。ユニホーム姿の高校生と触れ合って、子どもたちにはとても新鮮だったと思います」と話していました。
昌平の小林弘明部長は「彼らは残念ながら夏のベンチ入りから漏れたメンバーです。チームのサポートもしっかりしているし、普及活動を通じて、今後も好きな野球への関わり方はさまざまと気づくきっかけになれば」と期待していました。
